<<地盤変動被害関係>>
(1)建物の地盤変動被害の被害認定の手法
1)工事内容から影響要因を特定する
↓
2)影響要因について工事内容と地盤条件から影響範囲を試算する
↓
3)不同沈下状況や損傷状況から建物への影響範囲を特定する
↓
4)損傷状況と不同沈下測定から沈下形状と沈下量(傾斜角・変形角)を算出する
↓
5)沈下傾斜程度(傾斜角・変形角)と損傷状況の照合から被害認定する
(2)工事による地盤変動の要因
表-1 地盤変動要因
工事種別 |
地盤変動要因 |
影響範囲算定方法例 |
開削工事 |
・掘削時の土留壁のたわみ
・埋戻し不良
・土留矢板の引き抜き
・湧水の排水に伴う圧密沈下 |
・peckの掘削深さと沈下量の関係図
・近接施工要領による影響範囲
・一次元圧密計算
・FEM |
シールド・推進工事 |
・切り羽の不安定
・テールボイド
・地下水による圧密沈下 |
・peck
o rリマノフによる理論式
・FEM |
盛土工事 |
・盛土荷重による圧密沈下 |
・一次元圧密計算
・軟弱地盤層厚との関係図 |
(3)建物の沈下形状(「一体傾斜」と「変形傾斜」の違い)
建物に不同沈下が生じた場合、建物の沈下形状は以下のように大別されます。ひび割れなどの構造的な問題は変形傾斜の場合で、一体傾斜の場合は使用性や機能性が問題となり、構造的な問題が生じる事はありません。
「小規模建築物基礎設計指針」(日本建築学会)p254より
(4)木造建物の各沈下量と障害程度の関係
建物に不同沈下が生じた場合、建物の沈下形状により扱う沈下量は異なります。一体傾斜の場合には「傾斜角」、変形傾斜の場合には「傾斜角」と「変形角」に着目する必要があります。傾斜角は使用性や機能性、変形角は損傷等の構造的な不具合が問題がとなります。
表-2 傾斜角と障害程度の関係
傾斜角 |
障害程度 |
レベル |
3/1000以下 |
品確法技術的基準レベル-1相当 |
1 |
4/1000 |
不具合がみられる |
2 |
5/1000 |
不同沈下を意識する
水はけが悪くなる |
6/1000 |
品確法技術的基準レベル-3相当。不同沈下を強く意識し申し立てが急増する. |
3 |
7/1000 |
建具が自然に動くのが顕著に見られる |
8/1000 |
殆どの建物で建具が自然に動く |
4 |
10/1000 |
排水管の逆勾配 |
17/1000 |
生理的な限界 |
5 |
|
表-3 変形角と損傷程度の関係
変形角 |
損傷程度 |
レベル |
2/1000以下 |
損傷が明らかでない範囲 |
0 |
2〜3/1000 |
建付と内外壁の損傷が5割を超え損傷発生が目立つ.内外壁の損傷は0.5o程度,建付隙間3o程度,木工仕口隙間2o以下 |
1 |
3〜5/1000 |
損傷程度が著しくなる.基礎亀裂の拡大傾向が見られ,無筋基礎,内外壁の損傷が0.5o程度,建付隙間5o程度,木工仕口隙間が2oを超える. |
2 |
5〜8/1000 |
多くの損傷発生が5割を超え顕著.有筋基礎でも多くの建物で0.5oを超える亀裂,内外壁の損傷は1o,建付隙間は10oを超え,木工仕口隙間4o程度以上となる. |
3 |
8〜12/1000 |
損傷程度はさらに著しくなるが損傷発生率は頭打ち塑性的傾向を示す.有筋基礎でも1o程度の亀裂,内外壁の損傷2o程度,建付隙間15o程度,木工仕口隙間5o程度程度となる. |
4 |
|
「小規模建築物基礎設計指針」(日本建築学会)p254〜255より
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(5)非木造建物の許容沈下量
表-4 構造別の限界変形角の例 |
支持地盤
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構造種別
|
基礎形式
|
下限変形角
×10-3rad
|
上限変形角
×10-3rad
|
圧密層
|
RC
|
独立・布・べた
|
0.7
|
1.5
|
RCW
|
布
|
0.8
|
1.8
|
CB
|
|
0.3
|
1.0
|
W
|
|
1.0
|
2.0〜3.0
|
風化花崗岩
(マサ土)
|
RC
|
独立
|
0.6
|
1.4
|
RCW
|
布
|
0.7
|
1.7
|
砂 層
|
RC・RCW
|
独立・布・べた
|
0.5
|
1.0
|
CB
|
布
|
0.3
|
1.0
|
洪積粘性土
|
RC
|
独立
|
0.5
|
1.0
|
すべての地盤
|
S
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独立・布(非たわみ性仕上げ)
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2.0
|
3.5
|
下限変形角:
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亀裂の発生する区間数が発生しない区関数を越える変形角で、亀裂発生確率が50%を超える変形角または亀裂発生区間累加数は30%を超える変形角のこと
|
上限変形角:
|
ほとんど亀裂の出る変形角のことで、亀裂発生区間累加数が70%を超える変形角のこと
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RC:鉄筋コンクリート造 RCW:壁式鉄筋コンクリート造 CB:コンクリートブロック造
W:木造 S:鉄骨造
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「建築基礎構造設計指針」(日本建築学会)p153より
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(6)「住宅の品質確保の促進等に関する法律」74条技術的基準
「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」による構造上主要な部分に瑕疵が存する可能性は以下の通り。
表-5 床傾斜のレベル区分
|
レベル
|
床傾斜の程度
|
瑕疵が存する可能性
|
1
|
3/1000未満の勾配の傾斜
|
低い
|
2
|
3/1000以上6/1000未満の勾配の傾斜
|
一定程度存する
|
3
|
6/1000以上の勾配の傾斜
|
高い
|
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表-6 柱傾斜のレベル区分
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レベル
|
柱傾斜の程度
|
瑕疵が存する可能性
|
1
|
3/1000未満の勾配の傾斜
|
低い
|
2
|
3/1000以上6/1000未満の勾配の傾斜
|
一定程度存する
|
3
|
6/1000以上の勾配の傾斜
|
高い
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建設省告示第1653号 平成12年7月 |
(8)建物被害についてのその他の知識
《そのほか地盤変動被害の豆知識》
・木造建物の地盤変動被害の発生限界→約5o(1/1000)
・めまいなど人間の生理的限界→約1°(17/1000)
・盛土による影響範囲→軟弱地盤厚さの1.5倍
・矢板を引き抜いた場合の影響範囲→最大矢板長の1.4倍
・シールド推進工事の影響範囲→(管径+土被り)×1.4倍
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