<<事例-1>>
群馬県○○市の道路工事による近接住宅の不同沈下の原因と因果関係の究明(事前調査のないケース)
平成18年に敷地擁壁のすぐ横で、土留もせずに3m近くも掘削してボックスカルバートの埋設工事が行われました。大雨で工事が中断するなどしましたが、工事完了時には擁壁に亀裂が生じ施工者が補修を行い引き上げて行きました。(この時には事前調査も事後調査も実施されませんでした)
工事完了から9年が経過した頃、床の傾斜に気がつき、建築した工務店と建築士に相談したところ、どうも平成18年の工事による影響だということが分かりました。工事を発注した○○市の道路課に相談したところ、建物所有者が因果関係を立証しない限り対応できないとのことでした。
そこで当社が建物所有者からのご相談を受け、平成27年9月に建物の不同沈下状況を調査してサポートを開始しました。
建物の不同沈下等の現況調査と地盤調査、工事内容の調査などから検討した結果、道路工事のボックスカルバート設置の際の埋め戻しが不十分で、その後の地震時(東北地方太平洋沖地震を含め100gal以上の地震が3回)に地盤が動き宅地と建物に不同沈下が生じたことが分かりました。
○○市は、一旦は市の工事による影響を認めましたが、「住宅側にも何らか瑕疵があるはずで全てが市の工事の影響ではない」として、地元コンサルタントへの調査依頼や、○○大学のT教授らに「住宅側の瑕疵」の立証を依頼し、調査報告書や意見書が提出されました。
その調査結果は「地盤が軟弱で住宅が沈下した可能性がある」と言うもので、○○市はこれを根拠に「補償はできない」との態度に変わりました。
これに対して当社は、必要な地盤支持力を満足していることや工事が」なければ沈下は生じないこと、本件工事よって沈下が生じたメカニズムを立証すると共に、市側の調査報告書や意見書の問題点を指摘し、地元コンサルタントと○○大学のT教授は「住宅側の瑕疵」についての意見を取り下げましたが、それでも○○市は「公的な判断結果がないと補償できない」として、平成29年3月には○○地方裁判所への調停申請に至りました。
調停では、これまでの経緯と調査検討結果を説明し、調停委員の意見を得て当初当社が算定した修復費用等(図-5)の金額(1,050万円)で平成30年4月にやっと和解に至りました。
【こんなことを行いました】
(1)スウェーデン式サウンディングによる地盤調査(図-1)と建物の不同沈下測定並びに損傷状況調査(図-2、写真-1)
(2)不同沈下と損傷状況の評価(日本建築学会「小規模建築物基礎設計指針」対応)
(3)工事内容の調査と影響度の検討(地盤の安定計算と地震時の影響検討)(図-3)
(5)本件工事による不同沈下現象の立証(図-4)
(4)補強補修計画の策定と損害額(修復工事費等)の算定(図-5)
(4)意見書の作成
(5)地元コンサルタント(地盤調査会社)の報告書の問題点の指摘と協議
(6)○○大学のT教授作成の意見書の問題点の指摘と協議
(7)上記に基づく○○市との協議
(8)調停への同席と専門委員への技術的説明
(9)和解案の作成と協議
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